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最初に正直に書いておきます。私はツアーナースやイベントナースの現場で働いた経験はありません。私自身は病棟・外来・訪問看護と、いわば「継続して関わる」看護をやってきた人間です。だからこの記事は、実体験として語るのではなく、①調べた事実、②その働き方を選んだ看護師仲間から聞いた話、③採用や面接で色々なキャリアの人を見てきた立場、この三つから書きます。当事者の生の声も交えるので、雰囲気はつかめるはずです。
先に結論だけ言うと、ツアーナース・イベントナース・派遣という働き方は「勤務日も場所も自分で選べる自由さ」と「現場に看護師が一人=単独で責任を負う重さ」が背中合わせです。ここを両方わかった上で選べば、うまくハマる人にはとても良い選択肢になります。
ツアーナースとイベントナースはどんな仕事か
ツアーナース(添乗看護師)は、修学旅行や林間学校、部活の合宿、社員旅行などに看護師が同行し、参加者の健康管理や体調不良・ケガのときの応急処置をする仕事です。持参薬の管理や与薬、事前の保健調査票の確認、必要なときは医療機関への受診付き添いまで担います。宿泊を伴うことが多く、修学旅行や合宿だと1週間以上の連泊になる場合もあるとされます。夜間でも緊急対応が必要になりうるのが特徴です。
イベントナースは日帰りが中心です。コンサートや野外フェス、マラソンやスポーツ大会、展示会などの会場で、救護室・医務室に待機して来場者の急病やケガに対応します。必要に応じて救急搬送を要請したり、受診をすすめたりします。
両者に共通するのは、多くの場合看護師1名が現場の医療責任者として単独で対応するという点です。ここが病棟との一番の違いで、あとで触れる「しんどさ」の核心でもあります。
働き方(雇用形態・拘束時間・季節性)
基本は単発・スポット・短期の登録制です。派遣会社や専門会社に登録し、案件ごとに応募してアサインされる形が中心とされます。イベントは1日単位、ツアーは宿泊付きで拘束が長く、就寝中も待機に近い状態になりうると言われます。
ここで一つ、私が採用側の目線で「必ず確認して」と言いたいのが契約形態です。この仕事は「労働者派遣(雇用)」ではなく、「請負」「業務委託」として運用されるケースがあります。ある専門会社は自社サービスを請負と明記し、登録看護師との間に指揮命令関係はなく雇用関係でもない=労災・雇用・健康・厚生年金といった社会保険の適用がない、と説明しています。派遣(雇用)なのか業務委託なのかで、労働者としての保護や保険の扱いが大きく変わります。応募のときに契約形態を確認するのは必須だと思ってください。
もう一つ、季節性があります。修学旅行・林間学校のシーズン(春から初夏、秋)に需要が集中し、閑散期は仕事が減ります。つまり収入が月によって変動しやすい働き方です。
給与の傾向 ※すべて傾向・案件による
| 区分 | 相場(傾向) |
|---|---|
| ツアーナース日給 | 日給1万〜1.5万円程度が一般的。平均で1.2万円/日前後という記載も |
| イベントナース時給 | 時給1,500〜2,500円が多い。日給換算で8,000〜1万円程度(1日1万円前後という記載も) |
| 事前打ち合わせ | 時給2,000円ほど、回3,000〜4,000円程度がメジャーという当事者の声 |
数字は募集案件やシーズンで幅が大きいので、あくまで傾向として見てください。大事なのは、単発中心なので仕事が途切れやすく、これ単体で生活費を賄うのは厳しいというのが各メディア共通の見解だという点です。「収入が不安定」「ツアーナースの給料だけで生活するのは厳しいのが現状」といった記述もあります。位置づけとしては、副業やスポット収入、あるいは多様な経験を積む働き方として語られることが多い仕事です。
向いている人・しんどい面
仲間の話やメディアの記述を総合すると、向いているのは単独で冷静に判断できる人、臨機応変な対応力と体力がある人、引率者や参加者とうまく連携できるコミュニケーション力のある人です。役立つ臨床経験としては整形外科・外科・急性期などが挙げられます。急変を予測して素早く判断する力が身につくからです。
一方でしんどい面もはっきりしています。最大のものは単独責任の重さです。設備も医師もいない環境で、搬送するかどうかを自分で判断しなければなりません。ツアーナース12年目の当事者は「オールマイティに対応せねばならん旅の影武者」と表現し、「持参薬忘れは、マジで致命的」「ツアーナース対応中の死亡事故もあります」とまで書いています。別の当事者談でも「予防線を張っておかないと、とんでもないことに巻き込まれることもある仕事」との声があります。旅行中は自分が体調を崩せない身体的負担、賞与なし・収入不安定、業務委託運用だと福利厚生が薄いといった点も現実です。「病院で働けないからやってる、と言われる」といったキャリアの軽視への不満も、当事者から出ています。私はこの働き方を軽く見る風潮には反対で、単独で責任を持つ現場はむしろ高度な判断力が要ると思っています。
資格・経験の目安と、派遣の法規制
資格は看護師(正看)。准看護師でも可の案件が多いものの、正看のみの求人もあります。経験年数は会社によりますが1〜3年程度の臨床経験を求めるのが一般的で、単独対応ゆえ新卒や経験の浅い人にはハードルが高いとされます。AED・エピペンの使い方は最低限押さえ、普通救命講習の受講が推奨されます。
「そもそも看護師の派遣って違法では?」という疑問をよく聞きます。ここは正しく知ってほしいところです。原則として医療機関への看護師派遣は禁止です。労働者派遣法上、医療関係業務は派遣が原則禁止で、対象は病院・診療所・助産所・介護老人保健施設・介護医療院、および居宅等とされます。ただし例外があり、①産休・育休・介護休業の代替、②紹介予定派遣(派遣期間は最長6か月)、③へき地の医療機関への派遣(2021年4月改正で解禁)は認められています。そして医療を主業務としない場——社会福祉施設、有料老人ホーム、デイサービス、保育園、企業の産業保健、検診、イベント・ツアー救護など——では派遣が広く認められるとされています。ツアー・イベントがこの枠で成り立っているわけです。
日雇い派遣(30日以内)は2012年改正で原則禁止ですが、2021年4月の改正で社会福祉施設等の「医療機関以外」への看護師の日雇い派遣が解禁されました(看護師に限る)。ただし医療機関への日雇い派遣は依然として不可です。施設ごとの該当性や最新の可否は、派遣会社や最新の通達で必ず確認してください。
締め
ツアーナース・イベントナース・派遣は、「自由に選べる」と「一人で背負う」がセットの働き方です。副業やスポット、多様な経験の入口としてはとても魅力的ですが、契約形態(派遣か業務委託か)、保険の有無、季節による収入変動、そして単独責任の重さを理解した上で選ぶことを、採用を見てきた立場として強くおすすめします。関心があれば、求人を扱うエージェント等で実際の条件を確認してみるとよいと思います。
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