訪問看護の管理者・立ち上げ求人の読み方|両方経験した看護師が書く
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「管理者候補」「立ち上げメンバー」の求人が気になっている看護師さんへ

訪問看護の求人サイトを見ていると、月給が一段高く設定された「管理者候補」や「立ち上げメンバー募集」という枠が目に入ると思います。看護の現場を長くやってきて、そろそろ次の段階へ、と考えている人ほど気になる求人だと思います。

私は看護師を16年やってきて、その途中に訪問看護ステーションの立ち上げに参画した経験と、その後、自分で指定申請をして大阪でステーションを開設し、管理者として運営してきた経験の両方があります。どちらもやってみて、はっきり言えることがあります。「管理者求人」とひとくちに言っても、中身は一つではありません。同じ月給に見えても、実際にやる仕事はまったく別物ということがあります。ここでは、その読み分け方を、良い面も苦しい面もセットで書いていきます。

管理者求人には大きく2種類ある

求人票の文面はどれも似ていますが、私の経験では管理者の募集は大きく二つに分かれます。

  • (a) 既存のステーションで、今いる管理者が退職・異動するので後任を探している「交代型」
  • (b) これから新しいステーションを立ち上げるので、その最初の管理者を探している「立ち上げ型」

この二つは、同じ「管理者」「同じくらいの月給」でも、入って最初の半年でやることがまるで違います。求人票にはそこがはっきり書かれていないことも多いので、まずはどちらなのかを見分けるところから始まります。

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(a) 交代型 ―― すでにあるものを引き継ぐ

交代型は、利用者もスタッフも、日々の回し方も、すでにそこにある状態から入ります。売上ゼロから始めるわけではないので、その意味では安定しています。初日から訪問が回っていて、給料の原資になる利用者さんがいる。これは立ち上げにはない安心感です。

ただ、交代型の難しさは「人間関係の中に、後から入っていく」ところにあります。前の管理者のやり方に慣れたスタッフがいて、長く担当してきた利用者さんがいて、そこに新しい管理者として入る。前任者への信頼が厚かった職場ほど、最初は比較されますし、こちらのやり方をすぐには受け入れてもらえないこともあります。

だから交代型で見るべきは、看護の力よりむしろ「今あるものをどう受け止めて、どう少しずつ自分の色にしていくか」という調整力です。前任者がなぜ辞めるのか、職場に何か持ち越しの課題がないか、ここは面接でよく確認したいところです。

(b) 立ち上げ型 ―― ゼロから作る

立ち上げ型は、文字どおり何もないところからのスタートです。利用者はゼロ。私が自分で開設したときも、最初は当然、訪問先が一件もありませんでした。ここから始まります。

  • 近隣の居宅介護支援事業所や病院の地域連携室、クリニックへの挨拶回り。これは営業的な動きで、看護とは別の筋肉を使います。
  • 運営規程や各種様式づくり。記録の様式、契約書、重要事項説明書といった書類を整えていく作業です。
  • 指定申請という行政の実務。人員基準(常勤換算で必要な人数を満たしているか)を書類で示し、都道府県や市に申請を通す。ここは締め切りと要件がきっちり決まっている世界です。

立ち上げ型の魅力は、裁量の大きさです。記録の取り方も、どんな利用者さんを大切にするステーションにするかも、自分たちで決められる。これは交代型にはない面白さです。ただ、その裏側には「利用者が増えるまで売上が立たない」という不安定さがセットでついてきます。裁量の大きさと不安定さは、いつも背中合わせだと思っておいたほうがいいです。

管理者の仕事は「看護+マネジメント」

交代型でも立ち上げ型でも、共通して言えるのは、管理者の仕事は看護だけではないということです。私が実際にやってきたことを並べると、こうなります。

  • シフトを組む。誰がどの利用者さんに行くか、オンコールを誰が持つか。
  • 採用する。求人を出し、面接し、給与設計を考える。管理者手当のような形で、責任に対して手当が付く給与構造になっていることが多いです。
  • 教育する。新しく入った看護師が独り立ちできるように同行し、フォローする。
  • 関係機関に対応する。ケアマネや主治医、地域連携室とのやりとり。
  • 書類。レセプト(請求)、返戻の対応、記録のチェック。

訪問に出る時間より、こういう「後ろの仕事」に追われる日が普通にあります。看護が好きで管理者になったのに、看護の時間が減った、と感じる人もいます。ここは正直な部分なので、先に知っておいてほしいと思います。

面接で確認しておきたいこと

求人票では分からないことは、面接で聞くしかありません。私だったらこう聞きます。

  • このステーションは開設何年目ですか(交代型か立ち上げ型かがはっきりします)。
  • 今の利用者数と、看護師・リハ職を含めた職員数は何人ですか。
  • オンコールを管理者がどれくらい背負う想定ですか。管理者が毎晩持つのか、交代制なのか。
  • 24時間対応(緊急時訪問看護加算など)を取っていますか。取っているなら夜間の体制はどうなっていますか。
  • 母体の法人は、この事業所をどう位置づけていますか。急いで黒字化を求めるのか、じっくり育てる考えなのか。

特にオンコールと24時間対応は、生活そのものに直結します。ここを曖昧にしたまま入ると、月給の額面だけでは見えなかった負担に後から気づくことになります。エリアごとの相場観と合わせて、給与の水準が仕事の重さに見合っているかを確かめたい人は、エリア相場のカテゴリ記事もあわせて見てみてください。

向く人・まだ早いかもしれない人

脅すつもりはないのですが、正直に書きます。管理者に向いているのは、数字や書類を見るのがそれほど苦にならない人です。利用者数、稼働率、請求。こういうものから目をそらさずにいられるかどうかは、けっこう大きいです。

そして、一人で決める重さを引き受けられるか。スタッフのシフトも、採用の可否も、利用者さんを受けるかどうかも、最後は管理者が決めます。その重さを「やりがい」と感じられる人には合っています。逆に、まだ看護そのものをもっと深めたい時期の人、決断の重さより現場の手ごたえを大事にしたい人は、今すぐ管理者にならなくてもいいと思います。数年、現場で力をためてからでも遅くありません。どちらが偉いという話ではなく、時期の問題です。

よくある質問

管理者未経験でも「管理者候補」に応募していいですか

いいと思います。「候補」とついている求人は、現管理者やエリアマネージャーのもとで経験を積みながら、という前提のところが多いです。ただし、どれくらいの期間、誰が教えてくれるのかは面接で必ず確認してください。名ばかりで、実際は入ってすぐ全部任される、というケースもゼロではありません。

立ち上げ型は、開設したあと利用者が集まらなかったらどうなりますか

ここは正直に言うと、母体法人の考え方しだいです。じっくり育てる方針の法人なら時間をくれますが、短期の黒字化を強く求める法人だと、立ち上げ管理者にかかるプレッシャーは相当なものになります。だからこそ面接で「母体がこの事業所をどう見ているか」を聞くのが大事なんです。

まとめ

「管理者」「立ち上げメンバー」という同じ言葉の求人でも、交代型と立ち上げ型では、入ってからの毎日がまったく違います。交代型は、あるものを引き継ぐ安定と、人間関係に後から入る難しさ。立ち上げ型は、ゼロから作る裁量と、売上が立つまでの不安定さ。どちらにも良い面と苦しい面がセットであります。

両方をやってみた私が思うのは、どちらが正解ということはない、ということです。大事なのは、自分が応募しようとしている求人がどちらのタイプで、そこで求められるのが看護の力なのか、調整の力なのか、ゼロから作る力なのかを、面接の前に見分けておくこと。それだけで、入ってからのギャップはずいぶん減ります。月給の額面の向こう側にある「仕事の中身」を、どうか落ち着いて読んでみてください。

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