訪問看護ステーションで働くということ|立ち上げも経験した看護師が書く
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私がたどってきた道のこと

最初は介護のヘルパーでした。利用者さんの家に上がって、体を拭いたり、話を聞いたり。そういう時間の中で「体のことをもっと分かって関わりたい」と思うようになって、看護師の資格を取りました。動機としては、正直それくらい素朴なものでした。

看護師になってからは、急性期の病棟から始まりました。そのあと大阪の市民病院で外来に配属され、宿直もやりました。次に内科系の訪問看護ステーションの立ち上げに参画して、精神科病院が運営する訪問看護、そして民間の精神科特化型の訪問看護と、いくつかの現場を渡ってきました。今は大阪府柏原市で、自分で指定申請をして訪問看護ステーションと障害福祉の事業所を開設し、開設から4年以上が経ちました。

この記事は、病棟から訪問看護に移ろうかどうか迷っている方に向けて書いています。良いことも、しんどいことも、私が見てきた範囲で正直に書くつもりです。

訪問看護の仕事はどういうものか

訪問看護は、利用者さんの生活の場、つまり自宅に看護師がうかがって、療養のお手伝いをする仕事です。病院に来てもらうのではなく、こちらが出向く。ここがまず病棟と大きく違うところです。

制度としては医療保険と介護保険の両方があります。おおまかに言うと、要介護認定を受けている高齢の方は介護保険、そうでない方や特定の疾病・状態にあたる方は医療保険、という振り分けになることが多いです。ただ実際には年齢や病名、主治医の指示によって扱いが変わるので、ここは事業所によって得意な領域が分かれます。私が経験してきた精神科特化型のように、対象を絞っているステーションもあります。

仕事の中身は幅広いです。バイタルの確認や服薬の管理、点滴やカテーテル、褥瘡のケアといった医療的な処置もありますし、療養上の相談に乗ったり、ご家族に手技を伝えたりもします。精神科の訪問だと、処置というより「その人が地域で暮らし続けられるように話を聞き、様子を見守る」ことが中心になる場面も多いです。

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病棟との一番の違い

私が一番大きいと感じるのは、その場に一緒に判断してくれるチームがいないことです。病棟なら、気になることがあればすぐ隣の先輩に相談できるし、急変すれば人が集まってきます。訪問先では、基本的に自分一人です。もちろん電話で主治医や事業所に連絡は取れますが、目の前の状態を最初に読み取って、緊急性があるかどうかを判断するのは自分になります。この責任の感じ方は、慣れるまで結構こたえる人が多いと思います。

もう一つは、生活ごと見る看護になることです。病棟では病気を診ますが、家に行くと、その人の暮らし全体が見えてしまいます。冷蔵庫の中身、家族との関係、お金のこと、部屋の空気。それらを含めて「この人にとって続けられるケアは何か」を考えることになります。病院の正解がそのまま通用しないことも多くて、そこが面白さでもあり、難しさでもあります。

ご家族との距離も近くなります。何度も通ううちに信頼関係ができていく一方で、家庭の事情に踏み込みすぎない線引きも要ります。ここは経験を積みながら少しずつ身についていく部分だと感じています。

立ち上げ期のステーションと、安定期のステーション

私は内科系のステーションの立ち上げに参画したことがあり、そのあと自分でも事業所を開設しました。同じ訪問看護でも、立ち上げ期と安定期では働く空気がかなり違います。

立ち上げ期は、まず利用者さんの数が少ないです。件数が少ないと、一日の訪問がまばらで、事務所にいる時間も長い。その間に何をするかというと、近隣の医療機関やケアマネジャーさんへの挨拶回りだったり、記録の様式づくりだったり、いわゆる営業的な動きも含まれてきます。看護だけをしたい人からすると、この時期は戸惑うかもしれません。

一方で、立ち上げ期はやることの幅が広く、裁量も大きいです。運営規程をどう作るか、どういう利用者さんを受けていくか、そういう根っこの部分に関われます。私はこの時期に指定申請や人員基準といった行政の実務も自分で経験しましたが、看護の外側にある「事業を回す」感覚が身についたのは、この頃だったと思います。ただ、収入面や利用者数はまだ不安定で、精神的にはそれなりに揺れます。良い面と不安定さがセットになっている時期だと言えます。

安定期のステーションは、利用者さんが一定数いて、一日のスケジュールも組みやすく、教育の体制が整っていることが多いです。訪問看護そのものに集中しやすい環境と言えます。転職で初めて訪看に入るなら、まずは安定して回っているステーションのほうが、無理なく慣れやすいことが多いと思います。求人を見るときに、開設からどれくらい経っているのか、利用者数や訪問件数の規模を聞いてみると、その事業所がどの段階にいるのか見当がつきます。

給与と働き方

働き方の面では、多くのステーションで夜勤がありません。日中に訪問して回るのが基本の形です。そのかわり、24時間対応をしている事業所ではオンコールという当番があります。夜間や休日に、利用者さんやご家族から電話が入る可能性がある待機当番のことで、担当の日は携帯を持って過ごします。オンコールの頻度や手当のつき方は事業所によってかなり差があるので、ここは面接で必ず確認したほうがいい点です。

給与については、病棟の夜勤ありと単純に比べられるものではありません。夜勤がなくなる分の考え方や、オンコール手当、訪問件数に応じた仕組みなど、事業所ごとに構造が違います。具体的な金額はエリアや事業所で幅があるので、この記事では踏み込みません。相場感を知りたい方は、当サイトのエリア別の相場記事を参考にしてください。

訪看に向く人・様子を見た方がいい人

向いていると感じるのは、一人で判断することにやりがいを感じられる人、病気だけでなくその人の暮らしごと見るのが好きな人です。それから、決まりきった業務よりも、相手に合わせてやり方を変えていくことを楽しめる人。訪問は毎回状況が違うので、そこを面白いと思えるかどうかは大きいです。

逆に、いったん様子を見たほうがいいかもしれないのは、常に相談できる相手がそばにいないと不安が強い人です。これは向き不向きというより慣れの問題でもあるので、教育体制の整った安定期のステーションで、同行訪問を丁寧にやってくれるところを選べば、乗り越えられることが多いです。臨床経験がまだ浅くて不安な人も、いきなり一人立ちさせない事業所を選ぶのが安心だと思います。

よくある質問

Q. 臨床経験は何年くらい必要ですか?

よく「3年は病棟で」と言われますが、絶対の基準ではありません。実際には経験年数より、一人の場面で自分の判断に責任を持てるか、分からないことを分からないと言って相談できるか、のほうが大事だと感じます。経験が浅めでも、教育体制のあるステーションで段階を踏めば入っていけます。事業所によって受け入れの姿勢が違うので、面接で率直に聞いてみるのがいいと思います。

Q. オンコールはどのくらい鳴りますか?

これは本当に事業所と時期によります。利用者さんの状態が落ち着いていればほとんど鳴らない当番もあれば、看取りが近い方を担当していると連絡が続く日もあります。頻度、当番の回り方、手当の付き方をセットで確認しておくと、入ってからのギャップが小さくなります。

まとめ

訪問看護は、病棟とは責任の持ち方も、看る対象の広さも違う仕事です。一人で判断する重さがある一方で、その人の暮らしにまるごと関われる面白さがあります。立ち上げ期か安定期かでも働き方は変わりますし、オンコールや給与の構造は事業所ごとに差があります。だからこそ、求人票の言葉だけで決めず、事業所がどの段階にいて、どんな体制なのかを面接で聞くことをおすすめします。迷っている方の判断材料に、少しでもなればうれしいです。

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