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はじめに正直にお伝えします。私(長尾)は看護師として16年、急性期病棟から外来、訪問看護の立ち上げまで臨床の現場を歩いてきましたが、治験の仕事そのものは経験していません。CRCやCRAとして働いたことはありません。この記事は「やってみたらこうだった」という体験談ではなく、調べた事実と、実際に臨床から治験の世界へ移っていった仲間の話、そして長く看護師のキャリアを見てきた立場から、フラットに整理して紹介するものです。

臨床以外(非臨床)の道を考えたとき、「治験」という言葉はよく出てきます。ただ、ここには最初につまずきやすい落とし穴があります。それが今日の本題です。

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まず結論:CRCとCRAは「別の職種」です

治験の仕事を調べ始めると、CRCとCRAという似た略語が出てきます。名前が似ているので混同されがちですが、この2つは所属も立場もまったく違う別職種です。ここを取り違えると、求人選びの段階でずれてしまいます。整理すると、次のようになります。

CRC(治験コーディネーター) CRA(臨床開発モニター)
所属 病院/SMO(治験施設支援機関)=医療機関側 製薬会社/CRO(開発業務受託機関)=製薬側
立場 被験者・医師・製薬会社の橋渡し役 治験が正しく行われているかのチェック役
被験者と接するか 接する(対応が中心) 直接は接しない
看護師資格 活きやすい(約4分の3が医療資格保有とされる) 必須ではない(半数以上が無資格との指摘)

言葉の整理も一度しておきます。SMOやCROは「機関(組織)」の名前で、CRCやCRAは「職業」の名前です。「SMOに勤めるCRC」「CROに勤めるCRA」という関係だと考えると、頭の中が少し片づくと思います。

CRC(治験コーディネーター)の仕事と、看護師資格の活き方

CRCは医療機関側の立場で、治験に参加する被験者・担当医師・製薬会社の間に立つ調整役です。具体的には、被験者への説明や相談対応、来院スケジュールの調整、データ記録のサポートなどが中心になります。

ここで押さえておきたいのは、CRCは基本的に医療行為をしないということです。採血や処置をする仕事ではなく、被験者が不安なく治験を続けられるように説明し、相談に乗り、気持ちの面を支える。この「説明・相談・不安ケア」の部分に、看護師として患者さんと向き合ってきた経験がそのまま活きます。CRCの約4分の3が医療系の資格を持つとされるのも、この仕事の性質を考えれば納得できるところです。年収の目安は、媒体にもよりますがおおむね400〜430万円台とされる情報が多く見られます。

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CRA(臨床開発モニター)の仕事

一方のCRAは、製薬会社やCROに所属し、治験が計画どおり適正に行われているかを確認する役割です。治験を実施している医療機関を訪問し、原資料と記録を照らし合わせるSDV(原資料照合)や、症例報告書のチェック、進捗の管理などを担います。被験者と直接接することは基本的にありません。

CRAは看護師資格が必須ではなく、どちらかといえば理系の学位が重視される傾向があり、実際に無資格の人が半数以上を占めるという指摘もあります。つまり、看護師の強みが直接活きる職種とは言いにくい面があります。年収は、未経験の初年度でおよそ450〜500万円、経験を積むと600万円を超える例もあるとされます。数字だけ見ると魅力的ですが、次に触れる働き方とセットで考えたいところです。

働き方:日勤・土日祝が基本、ただし例外がある

治験の仕事は、病棟のような夜勤がなく、日勤・土日祝休みが基本とされます。生活リズムを整えたい人にとっては大きな利点です。ただし、職種ごとに知っておきたい点があります。

  • CRC:日勤中心ですが、被験者に有害事象(体調の変化など)が起きたときのオンコール対応が発生することがあります。また、所属するSMOによっては担当施設が広く、出張や転勤があるケースもあります。
  • CRA:施設を訪問する仕事なので、出張が多めです。近年は都市部中心の配置やリモート対応が増えているという指摘もありますが、移動の多さは仕事の前提と考えておくとよいでしょう。

給与の傾向と、見落としやすい「年収微減」の落とし穴

ここは正直にお伝えしたい部分です。数字の見た目に反して、移った直後にむしろ年収が下がるケースがあります。

たとえば病棟で夜勤手当を含めてしっかり稼いでいた看護師が、日勤のみのCRCに移ると、その手当分がなくなるぶん、一時的に年収が下がることがあります。「治験は非臨床で条件が良い」というイメージだけで動くと、この点で戸惑うかもしれません。

もちろん、生活リズムの安定や、長い目で見たキャリアの広がりという別の価値もあります。大事なのは、目先の額面だけでなく、夜勤の有無・生活リズム・数年先のキャリアまで含めて天秤にかけることです。ここを曖昧にしたまま進めないほうがいい、というのが率直なところです。

向いている人・しんどいと感じやすい面

治験の仕事に向きやすいのは、人と人の間に立って段取りを整えるのが得意な人、細かな記録や事務作業を丁寧にこなせる人です。CRCであれば、患者さんの不安に寄り添ってきた対人スキルがそのまま強みになります。

一方でしんどさを感じやすいのは、臨床の手技を使わなくなる点です。採血や処置、急変対応といった、これまで磨いてきたスキルの多くは日常業務では使いません。「体を動かして患者さんをケアする実感」を仕事の軸にしてきた人ほど、そこに物足りなさを覚えることがあります。事務・調整の比重が高い働き方が自分に合うかどうか、ここは一度立ち止まって考える価値があります。

おわりに

治験の仕事は、「非臨床だから楽」というものではなく、CRCとCRAで中身がはっきり分かれる、専門性のある別々の職種です。看護師資格が活きやすいのは主にCRC側で、CRAは資格より別の要素が問われます。給与も、額面だけでなく夜勤分の増減まで見て判断したいところです。

もし関心が湧いたら、まずはCRC・CRAを専門に扱う会社や転職エージェントで、実際の求人条件(勤務地・出張の頻度・給与レンジ)を具体的に確認してみると、自分に合うかどうかがはっきりしてきます。
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