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転職を決めて、いざ面接。応募書類は通った。あとは「なぜ辞めるのか」をどう話すか——ここで手が止まる人はとても多いです。正直に言えば印象が悪くなりそうだし、かといって取ってつけた志望動機もしっくりこない。
私は看護師として16年、急性期の三交代病棟から市民病院の外来、訪問看護ステーションの立ち上げ、精神科訪問看護と現場を渡り歩き、今は自分でステーションとヘルパー事業所を運営して、採用面接をする側に回りました。応募してくる看護師さんの「転職理由」を、これまで何十回と聞いてきた立場です。その視点から、まず結論をお伝えします。
結論:嘘はつかない。ただしベクトルは未来に向ける
転職理由の伝え方で大事なのはたった一つ。過去への不満で終わらせず、未来にやりたいことへ言い換えること。事実は変えなくていい。向きだけ変える。
なぜかというと、面接官が転職理由を聞いて本当に確かめているのは「この人はうちでも同じ理由で辞めないか」だからです。スキルや経歴は書類でだいたい分かります。面接でしか分からないのは、その人が長く腰を据えて働いてくれそうか。だから不満をそのままぶつけられると、優秀な人でも「またうちの不満を見つけて辞めるのかな」と身構えてしまう。逆に、不満の奥にある「本当はこう働きたい」が見えると、ぐっと安心するんです。
本音を建前に変える黄金公式
言い換えにはコツがあります。私が面接する側として「これは伝わるな」と感じる話し方は、だいたい次の4つを踏んでいます。
- 不満をそのまま言わない。「人間関係が最悪で」「残業が多すぎて」は、事実でも口にした瞬間に不安を与えます。
- 嘘はつかない。面接官はプロです。作り込んだ動機は雑談の深掘りで見抜かれます。事実は残す。
- 自分で努力したことを一言添える。「改善しようと動いたけれど難しかった」があると、逃げてきた人ではなく考えて動く人に見えます。
- 志望動機と一本の線でつなぐ。辞める理由と「だから貴院で働きたい」が地続きだと、話に説得力が出ます。
この4つを通すだけで、同じ事実でも受け取られ方がまるで変わります。以下、よくあるケースで実際に言い換えてみます。
ケース別 本音→建前
人間関係・いじめ
本音:職場の人間関係がつらい、陰口やいじめがあった。
建前:「チームで支え合える風土のなかで、腰を据えて長く成長していきたいと考えています。」
採用する側の本音:人間関係の悩みは、正直いちばん多い転職理由です。だから責める気はまったくありません。ただ「前の職場がひどくて」と具体的に語り出すと、聞いている側は「うちでも合わない人が出たら同じように言うのかな」と一瞬よぎる。人間関係を、逃げたい過去ではなく「求めたい環境」として語ってくれると、こちらは職場の雰囲気を素直に伝えたくなります。
夜勤で体調を崩した
本音:夜勤がきつくて心身のバランスを崩した。
建前:「心身のバランスを整えながら、看護の質を落とさず長く働き続けたいと思っています。」
採用する側の本音:体調は事実なので隠す必要はありません。むしろ大事なのは、それを踏まえて「この働き方なら続けられる」と自分で条件を分かっていること。日勤中心を希望するなら正直に言ってくれた方が、こちらもミスマッチを防げます。無理して入って早期に辞められるのが、お互いいちばんつらい。
残業が多い・休めない
本音:残業が常態化して休みも取れない、いわゆるブラックだった。
建前:「ワークライフバランスを保ちながら、腰を据えて長く貢献していきたいと考えています。」
採用する側の本音:「残業が多くて」と言われると、こちらは残業の有無ではなく「仕事量が増えたらまた不満に思うのかな」を気にします。だから量の話ではなく、続けられる働き方をしたいという前向きな軸で語ってほしい。実際の残業や休みの取りやすさは、面接の場でこちらに率直に質問して構いません。それは不満ではなく、長く働くための確認ですから。
給料が労働量に見合わない
本音:仕事量のわりに給料が安い。
建前:「これまでの経験を活かして、正当に評価いただける環境で長く貢献したいと考えています。」
採用する側の本音:お金の話をすること自体は悪くありません。生活がかかっているのは当然です。ただ「前は安すぎた」を前面に出すと、待遇だけで動く人という印象が先に立ってしまう。「評価してもらえる環境で力を発揮したい」と貢献とセットで語り、待遇は貴院の規定に従いますと一言添えると、ぐっと落ち着いて聞こえます。
教育体制がなく放置された
本音:新人教育がなく、放り込まれて不安だった。
建前:「教育体制の整った環境で基礎から学び直し、自信を持って看護にあたりたいと思っています。」
採用する側の本音:学び直したいという人は、採用側からするとありがたい存在です。伸びしろを自分で認めているということですから。「前の職場が教えてくれなかった」で止めず、「だからこそ学べる環境で成長したい」まで進めてくれると、こちらも育てがいを感じます。
スキルが身につかない環境だった
本音:採血も点滴もやらせてもらえず、スキルが停滞していた。
建前:「より実践的な看護を身につけ、できることの幅を広げていきたいと考えています。」
採用する側の本音:これも前向きに聞こえる理由です。ただ「前の職場ではやらせてもらえなかった」という言い方だと、環境のせいにしている印象が少し残る。「こういう看護を身につけたい」という目標の側から語ると、意欲として真っすぐ伝わります。
やってはいけない伝え方
逆に、面接する側として「うーん」となってしまう伝え方もはっきりあります。
- 不満の言いっぱなし。「あの職場は本当にひどくて」で終わる話。事実だとしても、聞く側には愚痴にしか届かず、うちでも同じことを言う人だと思われて損をします。
- 見え透いた嘘や作り込み。「御院の理念に感銘を受けて」だけで中身が空っぽだと、深掘りされた瞬間に崩れます。プロの面接官ほど、そこを丁寧に確かめます。
- 給与や待遇だけを理由にする。条件は大事ですが、それ「だけ」だと、もっと良い条件が出たらすぐ動く人に見えてしまう。貢献や成長とセットで語ることが大切です。
共通するのは、正直さそのものは全部プラスだということ。悪いのは正直さではなく、「不満で止めること」と「嘘で埋めること」。この二つさえ避ければ、あなたの本当の理由は十分いい方向に伝わります。
最後に:言い換えの前に、合う職場を選ぶこと
ここまで言い換えの話をしてきましたが、面接する側の私が本当に思っているのは、無理な言い換えでどこにでも通すことより、あなたに合う職場を選ぶことのほうがずっと大事だということです。夜勤で体を壊したなら日勤中心の職場を、学び直したいなら教育に力を入れている職場を。理由と行き先が本当に噛み合っていれば、言い換えは自然と前向きな言葉になります。作文しなくていい。
それでも、ブランクが長かったり、給与や勤務条件の交渉が不安だったりする人もいると思います。そういうときは、担当者がつく転職エージェントで模擬面接をしたり、自分の転職理由の言い換えを一緒に整理してもらうのも一つの手です。自分では気づけない伝わり方を、第三者の目で確認できます。
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転職理由は、あなたがこれからどう働きたいかを話す入口です。過去を正直に置きながら、顔だけ未来に向ける。それができれば、面接は「言い訳の時間」ではなく「これからの自分を語る時間」に変わります。応募は各事業所へ直接。あなたの次の一歩が、腰を据えて長く働ける場所につながることを願っています。