
私も三交代の夜勤をやっていました
看護師になって最初に働いたのは、急性期の一般内科病棟でした。三交代です。準夜勤で日付が変わるころに一度うとうとして、深夜勤ではナースコールと点滴の残量に神経をすり減らす。あの生活を何年か続けました。今は大阪府柏原市で訪問看護と障害福祉の事業所を運営していて、立場としてはスタッフの給与を「設計する側」になりました。夜勤手当をいくらに置くか、月給にどう組み込むか、という表計算を自分で叩く側です。
だからこの記事は、夜勤をやっていた側と、手当を決める側の両方から書きます。結論を先に言うと、夜勤手当は「1回いくら」だけでなく「拘束される時間に対していくらか」で見たほうが、求人の比較を間違えにくいという話です。
夜勤手当の全国平均
まず全国の平均額です。日本看護協会の「2024年病院看護実態調査」に、夜勤1回あたりの手当の平均が出ています。
| 勤務区分 | 夜勤手当の平均(1回あたり) |
|---|---|
| 三交代・準夜勤 | 4,567円 |
| 三交代・深夜勤 | 5,715円 |
| 二交代 | 11,815円 |
出典: 日本看護協会「2024年病院看護実態調査」。二交代の1回が三交代の準夜・深夜より高いのは、二交代の夜勤が16時間前後と拘束時間そのものが長いからで、単純に「二交代のほうが得」という意味ではありません。ここは後半でもう一度触れます。
12年で1,000円前後しか上がっていない
もう一つ、私がこの調査を見ていつも引っかかる点があります。2012年の同じ調査と比べると、準夜勤は3,812円→4,567円、深夜勤は4,635円→5,715円、二交代は10,119円→11,815円。約10年から12年かけて、増えた幅はどれも1,000円前後です。物価や最低賃金の上がり方を考えると、夜勤手当の伸びはかなり緩やかだ、というのが正直な感想です。夜勤は続けている限り体への負担が積み上がる働き方なので、この「上がりにくさ」は知っておいて損はないと思います。
夜勤手当の仕組み(深夜割増とは別物)
ここで混同されやすいのが、労働基準法の「深夜割増」と、病院が払う「夜勤手当」の違いです。
- 深夜割増は法律上の義務です。22時から翌朝5時までの労働には、通常の賃金に25%以上を上乗せして払わなければなりません。これはどの病院でも共通の最低ラインです。
- 夜勤手当は、それとは別に病院が独自に設定している手当です。金額も、月給に含めるか別途支給かも、病院ごとにバラバラです。
つまり、求人票に書いてある「夜勤手当◯◯円」の中に深夜割増が含まれているのか、それとも割増は別で計算されるのか、で手取りの見え方が変わります。ここは病院によって本当に違うので、平均額はあくまで目安にとどめてください。
「時間単価」で考えてみる
手当を1回あたりの額だけで比べると、判断を誤ることがあります。私が求人を見るときに一度やってみてほしいのは、拘束される時間で割ってみることです。
たとえば三交代の深夜勤の手当が平均5,715円。深夜勤の拘束が実働8時間だとすれば、手当だけを時間で割ると1時間あたり700円強です。二交代の11,815円も、16時間前後の拘束で割れば1回あたりの額ほどの差にはなりません。もちろんここには基本給や深夜割増が別に乗るので、これで損得が決まるわけではありません。あくまで「1回いくら」の数字に引っ張られず、拘束時間とセットで見る癖をつける、という話です。断定はしません。自分の体力と生活で割り算してみてください。
求人票でどこを見るか
- 月給に夜勤が何回分込みか:「月給◯◯万円(夜勤4回含む)」のような表示は、夜勤を減らすとその分下がります。夜勤前提の金額かどうかを必ず確認します。
- 1回あたりの手当額: 準夜・深夜で額が違うのか、深夜割増込みか別かをチェックします。
- 夜勤専従の単価: 夜勤専従は1回あたりが高めに設定されることが多い一方、生活が完全に夜型に寄ります。単価と引き換えに何を差し出すかを見ます。
夜勤を減らす・なくす選択肢
夜勤手当は魅力ですが、体を壊しては元も子もありません。私自身、病棟のあとは外来に移りました。外来は基本的に夜勤がなく、代わりに宿直がある職場もあります。その先で訪問看護に移り、今に至ります。夜勤のない働き方には、外来、訪問看護、日勤のみのクリニックや施設など、いくつも選択肢があります。当然ながら夜勤手当がなくなる分の収入設計は必要ですが、「夜勤ありき」以外の道は思っているより広いです。それぞれの働き方の実際は、当サイトの職場図鑑で職場タイプごとに整理しているので、そちらも見比べてみてください。
よくある質問
Q. 夜勤手当は税金がかからないと聞きましたが本当ですか?
いいえ。夜勤手当は給与の一部なので、通常は課税対象です。「手当だから非課税」という誤解がありますが、深夜割増も夜勤手当も所得税・社会保険の計算に含まれます。手取りで考えるときはそこも差し引いて見てください。
Q. 二交代のほうが1回の手当が高いので稼げますか?
1回あたりの額は二交代のほうが高い傾向ですが、拘束時間が長く、回数も月に組める本数が限られます。月の合計と体への負担を含めて見ないと、単純に「二交代=稼げる」とは言えません。ここも病院ごとの月給構成しだいです。
最新の金額は必ず一次情報で確認を
この記事の平均額は「2024年病院看護実態調査」時点のものです。手当は毎年見直される可能性があり、病院ごとの実額はここに書いた平均とは違います。応募を決める前に、必ず求人票と、日本看護協会の調査で最新の数字を確かめてください。
まとめ
夜勤手当の全国平均は、三交代の準夜勤4,567円、深夜勤5,715円、二交代11,815円。ただしこの12年での伸びは1,000円前後にとどまります。深夜割増と夜勤手当は別物で、月給への組み込み方も病院ごとに違います。1回いくらの数字だけで比べず、拘束時間で割った「時間単価」と、自分の体力・生活とのバランスで見てください。夜勤を減らす道も、外来・訪問看護・日勤のみと確かにあります。数字はすべて目安、最後は必ず一次情報で確認する。これが、夜勤をやっていた側と設計する側の両方から言える、いちばん正直なところです。
