
訪問看護への転職を考えるとき、多くの人が最初に引っかかるのが「オンコール」の三文字だと思います。夜間や休日に電話が鳴るかもしれない当番。想像すると気が重い、というのはよくわかります。私は看護師として16年働いてきて、自分でオンコールの携帯を持って夜を過ごした時期もあれば、いまは大阪府柏原市で訪問看護ステーションを運営する立場として、オンコールの体制と手当をどう組むかを決める側にもいます。鳴る側の緊張感も、体制を設計する側の悩みも、両方を知っているつもりです。その両面から、できるだけ正直にお話しします。
オンコールとは何か
オンコールは、簡単に言えば「夜間・休日に利用者さんやご家族からの電話を受ける待機当番」のことです。24時間対応体制をとっている事業所には、日中の勤務時間外に連絡を受ける仕組みが必要で、その役割を担当者が持ち回りで引き受けます。担当の日は携帯を手元に置き、いつ鳴ってもいいように備えて過ごす。これがオンコールの基本形です。
大事なのは、すべての訪問看護ステーションにオンコールがあるわけではない、という点です。24時間対応をうたっている事業所にはありますが、そうでない働き方もあります。この点は後半でもう一度触れます。訪問看護そのものの仕事像については訪問看護ステーションで働くということも読んでみてください。
実際、どのくらい鳴るのか
これがいちばん気になるところだと思います。正直に答えると「事業所と時期による」としか言えません。ごまかしているのではなく、本当に振れ幅が大きいのです。
私の実感では、利用者さんの層で全く変わります。精神科中心の利用者さんが多い事業所と、看取りを多く担っている事業所とでは、電話の鳴り方がまるで違う。看取りの時期が重なれば夜間の連絡は増えますし、逆に落ち着いた月はほとんど鳴らない夜が続くこともあります。同じ事業所でも月によって波がある。だから求人票の数字だけで判断せず、面接で「実際どのくらい鳴りますか」と具体的に聞くのがいちばん確かです。
電話で終わる対応と、緊急訪問になる対応
鳴ったら必ず家を出るのか、と身構える方が多いのですが、実際には電話相談で収まることが多いです。「熱が出た」「薬をいつ飲めばいいか」「機械のアラームが鳴った」といった相談に、電話口で状態を確認して落ち着いて対応を伝える。それで済むケースはかなりあります。
一方で、状態によっては実際に緊急訪問になることもあります。電話だけでは判断しきれない、あるいはその場で処置が必要と判断すれば出動します。出動がゼロではない、という前提は持っておいたほうがいいです。
手当の付き方の構造
手当については、金額の相場を断定することは避けます。事業所による差が本当に大きく、私が「◯円が普通」と言うのは無責任だからです。ただ、付き方の「構造」には共通する形があります。
- 二階建てが多い: 待機1回あたりの手当があり、それとは別に、実際に出動したら出動分の手当がつく、という組み合わせ。鳴らなくても待機した分は評価され、出たらさらに上乗せ、という考え方です。
- 月給に込みの表示もある: オンコール手当が基本給や固定手当に含まれている形。この場合は「何回分の待機が込みなのか」がわかりにくいので、内訳を確認する必要があります。
いずれにしても、金額は求人票の額面と面接での確認でしか正確にはわかりません。待機手当と出動手当が別立てなのか、月給込みなのか、そこを言葉で確認してください。夜間の手当という点では看護師の夜勤手当はいくら?の考え方も参考になります。
なお、待機している時間が労働時間に当たるかどうかは、呼び出しの頻度や拘束の程度によって変わりうる、というのが一般的な考え方です。ここは断定的な判断を避けたいところなので、気になる場合は労働基準監督署や社会保険労務士などの専門窓口、あるいは事業所に直接確認してください。
生活への影響
手当の話と同じくらい、生活への影響も正直にお伝えしておきます。オンコールの日は、携帯を持って寝る緊張感があります。着信音で飛び起きられるよう、深く眠りきれない夜もある。当番の日は飲酒を控える、遠出をしない、といった制約も出てきます。
これは向き不向きがはっきり分かれるところです。「いつ鳴るかわからない」という状態が苦手な人には負担が大きい。逆に、鳴らない夜のほうが多いと割り切れる人、翌日の勤務調整がある職場なら回せるという人もいます。自分がどちらのタイプかを、正直に考えてみてください。
求人票と面接で確認すべきこと
不安を減らす一番の方法は、入る前に具体的に聞くことです。私が採用する側として聞かれて困らない、むしろ聞いてほしい項目を挙げます。
- オンコールの頻度(月に何回程度の当番になるか)
- 免除の可否(子育て中など事情がある場合に外してもらえるか)
- 待機手当と出動手当の額、そしてその内訳(月給込みか別立てか)
- 翌日の勤務調整があるか(夜に出動した翌日の勤務がどうなるか)
これらを面接で聞いても、まともな事業所なら嫌な顔はしません。むしろ、はぐらかされるようなら、その体制自体を疑ったほうがいいと思います。
オンコールなしで働く選択肢
そもそもオンコールを持たない働き方もある、というのは知っておいてほしいことです。オンコール免除の事業所、24時間対応をしていない訪問看護、あるいはデイサービスやクリニックなど、そもそも夜間待機のない職場もあります。オンコールが不安だから訪問看護をあきらめる、というのは少し早い。働き方の幅は思っているより広いです。
自分に合う職場のタイプを探すなら、職場図鑑で働き方ごとの違いを見比べてみてください。オンコールの有無も含めて、どんな現場があるのかをつかむ手がかりになると思います。
よくある質問
Q. 入職してすぐオンコールを任されますか?
事業所によりますが、いきなり一人で持たせるところは多くありません。利用者さんの状態や連絡の流れをある程度わかってからでないと、担当する側も不安ですし、任せる側も心配です。導入の段取りを面接で確認しておくと安心です。
Q. 子育て中でもオンコールは避けられますか?
免除の仕組みがある事業所なら、家庭の事情に配慮してもらえる場合があります。ただし全事業所で当然に免除されるわけではないので、これも「免除の可否」として面接で確認すべき項目です。制度として用意しているかどうかを聞いてください。
まとめ
オンコールは、訪問看護の24時間対応を支える仕組みです。鳴る頻度は事業所と利用者層と時期によって大きく変わり、多くは電話で収まる一方で出動もある。手当は「待機分+出動分」の二階建てが多いものの金額差が大きく、額面と内訳は求人票と面接で確認するしかありません。生活への影響には向き不向きがあり、免除やオンコールなしの選択肢もあります。鳴る側も設計する側も経験した立場から言えるのは、不安なら入る前に具体的に聞いていい、ということです。ちゃんと答えてくれる事業所を選んでください。
